囲柱ラーメン木構造は、木の特性を活かす
先にも述べましたが、私は「やっぱり木が好き」で、温かみ・柔らかみ・空気感・香りなど、木が人に与える心理的効果は非常に大きいと考えます。心理的作用がリフレッシュ・疲労感の解消・身体的効果へとつながります。材種によって効果も差異があるものの、木には防虫効果や抗菌効果もあると言われています。木造校舎で育った小学生は、風邪をひきにくく、学業に集中して取り組めた例も学術論文で紹介されています。
2011年から順次構造体評価をいただくために構造体の破壊実験を2022年まで繰り返し行ってきましたが、ふだん鉄や油の匂いで充満している鉄工所の工場内が、木材の香りでいっぱいになっている期間は本当に心地よく、自ら体感しています。
2019年に竣工した当社新事務所は、構造体を現しにし木材が露出している面が大きく、来客には好反応で話がはずみ滞在時間を長くするものとなっています。会社が休日のタイミングではレンタルスペースとして貸し出しており、リピートターとなっています。
鉄工所でありながら木材と向き合う。地域の木材を地域の企業と協力しあい、伐って・加工して・使って(建てて)・植える・育てるを一貫し、地域ぐるみで社会貢献・環境貢献ができているのを感じます。
連続した大開口・大空間を作ることを可能とする囲柱建築
木造では成し遂げにくいラーメン構造を実現化したことにより、囲柱ラーメン木構造の配置によって、耐力壁に頼ることなく大開口・大空間を可能としています。それは、鉄骨造から木造への代替えの可能性を意味し、木造の市場の拡大となります。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造に負けない強度を実現
「木材の調達の観点や加工可能な工場を制約しないこと」、また構造体の実現可能な姿やコストのことを考えた上で「木材を自然体で使用すること」をコンセプトとして掲げているので、一般流通材サイズで構成する構造体という位置付けに意義があります。大断面集成材やCLTや断面を大きく使うコンクリートとは異議をもち、コンクリートをここまで細く使う事は無く、構造体の重量を加味すれば、決して負けていません。
木材は変形するものの限界到達点が早く脆性的破壊をします。鉄は弾性域を越えても安定的延性があり、のち破壊をします。この破壊性状の差の在る素材の掛け合わせが、木材をより強靭化することになりました。柱脚・柱頭仕口の剛性を上げつつ、靭性も備え持つ構造体は、一般流通サイズの木材で構成できています。他には無いと思います。
囲柱ラーメン木構造のコストパフォーマンスについて
比較対象は、鉄骨造です。その鉄骨造とほぼ同じコストで建設可能です。
実は、構造体の柱部分(囲柱体)だけに注目すると、鉄骨柱より高価なものとなっています。木材の加工技術・専用の金物・工場組立て技術・強靭性と、特別な要素を持ち合わせているのは、柱部分だからです。
しかしながら鉄骨造と同等のコストとうたえるのは、構造体が軽いこと・現場での手間が少ないことが挙げられ、地盤支持が軽く考慮できたり、コンクリート基礎がひと回り小さく出来たり、揚重重機・運搬車両が小さく少なく出来たり、工事期間が短いため仮設足場や仮囲いや敷鉄板などの仮設費を削減できたりと、建設費全体で比較すると同等となると言うことです。
スパンをもっと飛ばしたいなどと無理せず、木材を出来る限り自然体で使うことがコストに直結します。一般流通サイズの小さな力の寄り集まりが、皆で踏ん張ってこらえる姿を想像して使ってもらえると嬉しいです。
囲柱開発者・つなぐプロジェクト/ライン工業 代表 瀧本 実(たきもと みのる)