開発実験を順次進めている時には、構造体の進化・前進することだけに情熱を注いでいました。実験をするたび毎に課題が挙がり、その課題解決をすれば数値が上がるという繰り返し、どんどん精度が良くなる構造体の成長を目の当たりにしてきました。
開発当初は、試験費用を抑えるために、輸入材(オウシュウアカマツ)で囲柱を作ってきましたが、構造体の木材プレカットの仕様・金物の仕様が決まってきた2015年、ご指導いただいてきた岐阜県立森林文化アカデミー小原教授より岐阜県産ヒノキの採用を提案していただきました。
翌年の2016年。林野庁より事業を採択され開発が加速するきっかけともなった時期ですが、オウシュウアカマツと岐阜県産ヒノキの比較検証で、県産ヒノキから得た実験結果が想定以上に高く、県産材採用へと開発方針を方向転換しました。そこからです。公開実験をしたり、展示会に出展したりを始めていると、周囲からの声援を感じるようになったのです。
ふと後ろを振り返ると、岐阜県産の木材をつかって県内企業の協力によりプレカットされた木材を調達することが、地域貢献・地域創生をする事に繋がっていたんです。これまで構造体の進化だけに捉われてきた私でしたが、これこそ理想の姿だと感じ、会社の存在意義をここに掲げる想いが溢れました。

今では皆が当たり前のように県産証明材を、JAS材を合法伐採材を使っています。私はこれが意味するところの尊さをかみしめながら使っています。最終消費者である皆様にもそうあって欲しいと願っています。未来ある子どもたちのために、使命感を持って今われわれができることを説く、かしこい消費者となって欲しい。そんな想いです。
一般流通材のなかでもKD材(製材品)を取り扱う事は、険しい山で樹を大きくまっすぐ必死に育ててきた林業家への恩返しでもあり、山を健全に育てることでもあり、川をくだって海にまで、良い影響を広げる好循環に繋がります。そんな輪が広がることを心より望みます。
囲柱開発者・つなぐプロジェクト/ライン工業 代表 瀧本 実(たきもと みのる)