第1棟完成への道 〜木造建築の未来を拓く挑戦〜

「未知の構法を、どうやって現場で形にするか。」
図面の上では証明できても、“つくる”段階には、また別の挑戦が待っていました。設計する人。構造を考える人。法的な成立を支える人。そして、現場で実際につくる人。
そこで私たちがたどり着いたのは、それぞれの専門性と経験を持つ人たちが力を重ねる、“チーム”という形でした。
空間を描く、その発想 〜たけひろ建築工房〜
経営者会議での出会いが、第一棟の設計を動かしました。
2014年当時、木造建築の世界でも、新しい工法を模索する動きが少しずつ生まれていました。木を愛する人々が、それぞれの現場で直面する課題。その先に、新しい木造のあり方が求められていたのだと思います。
たけひろ建築工房と共有したのは、「広い空間をどう活かすか」という視点でした。
非日常的な大開口・大空間も、木造建築が向き合う課題のひとつであり、新たなニーズでもある。そんな考えのもと、両者で理想の空間についていつまでも語り合っていたことを思い出します。

スケルトンインフィルの思想と、囲柱建築がめざす“構法の自由”。構造によって空間を細かく決めてしまうのではなく、広く自由な空間をつくり、その使い方に可能性を残していく。
互いの考えが響き合い、確かな設計力と施工力によって、実験の中にあった構法が、一つの建築空間へと変わっていきました。
たけひろ建築工房
建築工事全般の設計施工販売/ワンフロアー構想
見えない場所で、支える精度 〜株式会社丸泰〜
囲柱建築の一階を支えたのは、丸泰の型枠精度と施工品質です。かつてのマンション建設でその技術を知っていたことから、今回の現場も迷わず託しました。
何より印象に残っているのは、現場における「ものづくり」への真摯な姿勢です。
いくつもの業者が入り乱れる建設現場では、今の情報が次の瞬間には変わっていることも珍しくありません。そんな状況でも、現状を読み取り、それぞれの立場を汲み取りながら良策を考え、その場で実行してくれました。

囲柱ラーメン木構造では、柱を受けるアンカーボルトの位置が、その後の施工精度にも関わります。アンカーボルトをミリ単位で設置し、型枠を外すと“完成形”が現れる。
完成後には見えなくなる部分だからこそ、そこに求められる精度がある。
新しい構法を成立させるために必要だったのは、目に見える構造だけではありません。足元を正確につくる職人の技術が、囲柱ラーメン木構造を現場から支えてくれました。
株式会社丸泰
建材資材・不動産・建築・エネルギー・エコロジー
未知の構法を、法的に成立させる 〜イワシマ設計室〜
第一棟の構想を、法的に確かな形へ導いたのがイワシマ設計室です。
代表とは幼馴染で、同じ野球チームでプレーしていた間柄。互いの人間性を理解し合ってきた長い関係があり、その信頼が今回の挑戦を支えました。
囲柱ラーメン木構造は、これまでにない構法です。
実験によって構造性能を確かめ、図面を描くだけでは、実際の建築にはなりません。建築として成立させるためには、建築確認をはじめ、法的な条件を一つひとつクリアしていく必要があります。

新しいことに挑戦するからこそ、「どうつくるか」と同時に、「どう成立させるか」を考えなければならない。その役割を担ったのが、イワシマ設計室でした。
構想を読み取り、法的な条件と向き合い、実際に建てられる建築へ落とし込んでいく。
長年の信頼関係と、設計・建築確認業務で培われた専門性。その両方があったからこそ、未知の構法を“実際に建つもの”へ進めることができました。
イワシマ設計室
建築設計・建築確認業務・監理
実験者から、現場設計者へ 〜TE-DOK〜
研究の初期から共に歩んできた、構法の理解者・河本さん。
第一棟では構造設計と工法の実装を担い、これまで実験によって積み重ねてきた理論を、実際の建築へとつなぎました。
それまでの河本さんは、各接合部の懸念点を探り、試験体を最終破壊点まで到達させることで構造性能を確かめる“実験者”でした。
試験体だからこそ、壊れるところまで試す。どこに弱点があり、どこまで耐えられるのかを確かめる。しかし、第一棟で向き合うものは試験体ではありません。

実験で確かめてきた構造を、今度は実際に人が使う建築として成立させる。河本さんの役割も、“実験者”から“現場設計者”へと変わっていきました。
研究と実務を往復しながら、実験で得た知見を現場へ実装する。囲柱ラーメン木構造にとっても、河本さんにとっても、研究が実建築へつながった象徴的な転換点でした。
WOOD AC ~ TE-DOK
木造建築の調査・提案・設計・技術開発・人材育成
ひとつの構法を、チームで建築にする
「ひとりでは届かない場所へ、仲間とたどり着いた。」
空間を考える。
足元を精度高くつくる。
法的に成立させる。
構造を実建築へ落とし込む。
それぞれが別の専門領域を持ちながら、目指していたのは一つの建築でした。新しい構法だからこそ、誰か一人の知識だけでは完成しない。
図面や実験の中にあった囲柱ラーメン木構造は、異なる専門性を持つ人たちがつながることで、初めて現場に立ち上がりました。
第一棟は、構法を実証する建築であると同時に、“チームで新しい建築をつくる”という方法を形にした一棟でもあったのです。
次回:エピソード4は…
学会への発表
現場で形になった構法を、さらに確かなものへ。
研究の積み重ねを、今度は学術の世界へ届けていきます。
